三叉神経痛の基礎知識

dr_abe
NTT東日本関東病院 ペインクリニック科 部長
安部 洋一郎先生

はじめに

三叉神経痛に対する神経ブロック治療は、薬物療法に奏功しない症例や、薬剤の副作用がある症例に対して行います。この治療法の利点は、なにより安全であるということです。

当科では年間400件程度の治療を行っていますが、この20年間重篤な合併症は起きていません。また他の治療を行ったあとの再発例に対しても行うことができるという利点もあります。しかし、残念ながら欠点もあります。効果期間が数年(1~4年程度)であるため、疼痛再燃時は治療を繰り返す必要があること、知覚がおちる、しびれが気になるなどの随伴症状があることです。近年は解決策として、パルス高周波法という方法を行っています。

三叉神経ブロック治療とは

三叉神経痛に対する神経ブロック治療は局所麻酔薬で無痛にしたのち、長期間の症状緩和を目的とした無水アルコール、フェノールグリセリンなどの神経破壊薬を用いたり、高周波熱凝固で神経を変性させる方法があります。当科では約25年前までは99.5%アルコールを用いたアルコールブロックを行っていましたが、10数年に及ぶ(30年間を経て再発した症例もある)有効期間がある半面、知覚低下や完全知覚消失が継続し、角膜の知覚低下が起こることもあることから、現在は高周波熱凝固法が有効性、安全性の点から主流となっています。高周波熱凝固法は針先端の接触した箇所のみ発熱するため、安全性が高いのが特徴です。副作用は知覚低下やしびれ感です。どうしてもしびれが気になる場合は針先端の温度を通常の90度から70度などに低下させています。
近年、42℃以下の高周波(ラジオ波)で神経ブロックをおこなうパルス高周波法が上肢、下肢痛の治療に用いられています(図1,2)。パルス高周波は運動神経、知覚神経を破壊するのではなく、42℃への加熱と電磁波の断続的なon,offの繰り返しが神経伝導に影響を与えると考えられています(文献2,3)。

眼窩上(滑車上)神経ブロック(②)、眼窩下神経ブロック(④)、おとがい神経ブロック(⑥)は三叉神経のもっとも末梢で行うブロックで、三叉神経痛と診断した場合、第一選択となるブロックです。昨今、超音波を利用することで正確にブロックできるようになっています。上顎神経ブロック、下顎神経ブロックは上記神経ブロックより中枢側でおこなうブロックです。

ガッセル神経節ブロック(①)について
当科で主流となっている神経ブロックです。適切な針の進行を心がければ非常に有効で安全です。当科では年間200人近く、このガッセル神経節ブロックを施行しています(図4)。

まとめ

以上のように、三叉神経ブロックは抹消枝ブロックからガッセル神経節ブロックまで複数のブロックがあります。現在では高周波熱凝固法が主流であり、効果も高い反面、しびれが必発の治療法であり、より合併症の少ないパルス高周波法の発展が望まれています。

  • 参考文献
  • 1)塩谷正弘、若杉文吉:ガッセル神経節ブロック.外科治療51:670-674, 1984
  • 2)日本神経治療学会治療指針作成委員会編:標準的神経治療:三叉神経痛.神経治療27,2010.
  • 3)Erdine S Ozyalcin NS Cimen A et.al. Comparison of pulsed radiofrequency with conventional radiofrequency
    in the treatment of idiopathic trigeminal neuralgia.Erdine Eur J Pain. 2007 Apr;11(3)309-13
  • 4)堀智勝.経皮的ガッセル神経節凝固術.脳神経外科、10 (9):923-930.1982
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